大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)156号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人藤井稔、同山村利宰平の上告理由二について

受取人の記載のない白地手形に引受署名がなされ、流通におかれた場合には、該手形の交付を受けた者は、これを引渡によつて他人に譲渡し得るのであり、かかる譲渡によつて白地手形の所持人となつた者は同時に白地補充権をも取得するものと解するのが相当である。(昭和七年三月一八日大審院判決、民集一一巻三一二頁参照)従つて、所論被上告会社の補充権行使は濫用であるとの主張並びに被上告会社に補充権のないことを前提とする「振出地」についての主張は、いずれも理由がない。

同三(1)について。

受取人の記載のない白地手形が引渡によつて譲渡された場合には、あたかも白地裏書がなされた場合と同様、手形法一七条の適用があることは当然である。所論は、これと異なる見解に立つもので、採用できない。

同三(2)、(3)について。

原判決挙示の証拠によると、被上告会社の代表者小田栄吉は、本件手形の取得当時、満期までには、訴外薮内源太郎が上告人に対する原判示物品の引渡を履行するものと信じていた旨の原判決の認定は肯認できる。従つて、被上告会社に手形法一七条但書所定の害意はなかつたものと解するを相当とすると判断した原判決は正当である。所論は、独自の見解に立つ主張であつて、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例